【SDGs】環境配慮型樹脂拡大へ 伊藤忠商事
伊藤忠商事が環境配慮型プラスチックの取扱量を拡大する。オーストリアの石油化学大手メーカーのBoreails(ボレアリス)社からバイオポリプロピレンの販売権を獲得した。今回は伊藤忠商事の環境ビジネス拡大に関して詳細な情報を提供します。
出典:ポリプロピレン再生樹脂|弘英産業株式会社より引用
目次
Boreails(ボレアリス)社とは?
Boreails(ボレアリス)社はオーストリアの大手石油化学メーカーでポリエチレン、ポリプロピレンといった石油由来プラスチックを幅広く製造・販売している。このボレアリス社がフィンランドのバイオ燃料大手メーカーのネステから廃棄食用油を原料に製造されたバイオプロパンを購入。既存のプロパン脱水素法の設備で一部の原料をバイオプロパンに置換してバイオポリプロパンを製造している。原料一部をバイオマス由来に置き換えることで、マスバランス方式上「100%バイオマス由来ポリプロピレン」を製造している。また、製品は第三者認証機関から国際持続可能性カーボン認証を取得している。
マスバランス方式とは?
マスバランス方式とは投入した総原料量と生産量の収支を考慮する方式。例えば、プラスチック100 kgの製造とすると、原料となるモノマーの20 kg つまり20%にバイオマス由来を使用し、残り80%に石油由来モノマーを使用して製造する場合がある。この場合、厳密には20%バイオマスプラスチックが100 kg製造されます。ここでマスバランス方式を採用すると、生産された100 kgのプラスチックのうち、20 kgを「100%バイオマス由来プラスチック」とみなすことが出来るという概念である。マスバランスの概念は紙、電力等の業界では幅広く使用されており、プラスチック業界にも今後浸透していく可能性が高い。
マスバランス方式のバイオマスプラスチックのメリットとは?
1. トレーサビリティの確保が可能
マスバランス方式を採用した場合、再生可能原料(バイオマス由来原料)の投入量と製品の出荷量を厳密に管理する必要がある。そのため、原料調達から製品包装まですべてのバリューチェーンで第三者認証機関から監査を受けることとなる。こうした認証を取得した製品であれば、「100%バイオマスプラスチック」として安心して購入・使用することが出来る。
2. 可食原料と競合しない
現行のバイオマス由来プラスチックの多くはサトウキビやトウモロコシなどの可食資源を原料として使用している。一方、今回紹介するマスバランス方式を採用したバイオマス由来プラスチックは非可食性原料から製造される場合が多く、食品原料と競合しない強みがある。発展途上国の食料不安を助長しない点は非常に大きいと考える。
3. 既存プラントを使用可能
マスバランス方式を採用したバイオマスプラスチックの最大のメリットは既存プラントを使用して製造できる点である。基本的には石油由来原料の一部をバイオマス由来原料に置き換えるのみであり、既存プラントで問題無くプラスチックを製造することが出来る。現在普及しているバイオマス由来のポリエチレンは専用プラントを必要としており、増産が大きな課題となっている。
4. 既存プラスチックと同様の加工性や機械特性を持つ
マスバランス方式を採用したバイオマスプラスチックは、既存の石油由来プラスチックの一部をバイオマス原料に置き換えたのみであり、基本的な加工性や機械特性は既存の石油由来プラスチックと同様である。そのため、ユーザーは既存の加工ラインで最終製品を製造することが出来る。
伊藤忠商事の環境ビジネス展開
伊藤忠商事はオーストリアの石油化学大手メーカーのBoreails(ボレアリス)社からバイオポリプロピレンの販売権を獲得した。今後はマスバランス方式を適応したバイオポリエチレンや廃棄プラスチック由来の再生プラスチック材料も取り扱う計画を発表している。マスバランス方式を普及させ、将来的に環境配慮型プラスチックの取扱量を40万t/年まで引き上げる予定だ。
技術内容評価
【新規性】
★★☆☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★★☆
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外部リンク
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Boreails(ボレアリス)社 HP
https://www.borealisgroup.com/
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