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バイオマス由来グルコースから没食子酸などの有用モノマーへ変換 花王

 花王株式会社芳香族化合物である没食子酸および4-アミノ-3ヒドロキシ安息香酸(4, 3-AHBA)をトウモロコシやサトウキビ等の植物由来グルコースから微生物を用い製造する発酵生産技術を開発したと発表した。今回は花王株式会社の新規発酵生産技術に関する詳細な情報を提供します。

 

 

発酵によるバイオマス原料からの没食子酸の生産スキーム(花王株式会社

引用:https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2023/20230331-001/より引用

 

 

目次

 

花王株式会社とは

 

 花王株式会社とはトイレタリー国内首位、化粧品においても国内最大手の化学メーカーとなります。原料から一貫生産し、独自の物流・販社システムを所有するため、競業他社と比較して安価で高品質な製品をラインナップしています。また、トイレタリー、化粧品分野のみならず幅広い分野にて研究開発を続けています。近年ではサステナビリティを重要視した企業活動を行っており、気候変動対策優良企業に選出されています。

 

 

 

詳細内容

 

 花王社は洗剤用酵素で培った生産、研究知見を活用。 バイオマス由来のグルコースから化学原料(没食子酸、4, 3-AHBA)製造を可能にし、環境に優しい製品の安定供給への貢献が期待される。

 没食子酸はウルシ科植物にできる虫こぶ(五倍子)から抽出される植物ポリフェノールの一つ。パソコンやスマートフォン等の電子機器の半導体、ボイラー用防サビ剤の原料など幅広く利用されている。ただ、樹木由来のため収量が天候に左右されやすく、生産地も限定されていた。

 そこで花王社はグルコースから没食子酸を発行生産する技術に着目。多様な有用物質の発酵生産に用いられる産業用微 「生物「コリネ型細菌」に複数の没食子酸生産経路を導入し、かつ副産物生産の代 謝経路を抑制することに成功。コリネ型細菌を用い、 グルコースから没食子酸を高効率に発酵生産する技術を確立した。開発したコリネ型細菌は、グルコースから没食子酸への変換能力が元のコリネ型細菌より1・ 8倍程度増加した。 一方、バイオマス由来プ ラスチックの機能性向上に 向け、プラスチック素材の なかでも耐熱性、強度に優 れるポリベンズオキサゾール(PBO)にも着目。

 

ポリベンズオキサゾール(PBO)構造

 

 その原料であ4, 3-AHBAをグルコースから生産することを行った。これまでグルコースから 4, 3-AHBAを生産する方法は確立されていなかったが、類似成分がコリネ型細菌のなかで生合成されていることを利用。独自開発した酵素をコリネ型細菌に導入することで、生合成経路の構築に成功。グルコースから4, 3-AHBAを生産する新たなプロセスを確立した。

グルコースから4, 3-AHBAを発酵生産するプロセス

引用:https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2023/20230331-001/より引用

 

 花王社は他の芳香族化合物も引き続き研究開発を進めていくことを発表しており、バイオマス原料を用いたバイオプロセスによる石油プラスチック代替原料の供給が期待される。

 

 

 

技術内容評価

【新規性】

★★★★☆

【経済への影響度】

★★★★★

SDGs貢献度】

★★★★★

【実現性】

★★★★★

【投資対象度】

★★★★☆

 

 

 

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外部リンク

 

花王株式会社 HP

https://www.kao.com/jp/