大気中の二酸化炭素を直接回収するダイレクト・エアーキャプチャー技術の研究を開始(東邦ガス)
東邦ガス株式会社が名古屋大学、東京理科大学などと共同で大気中の二酸化炭素を直接回収するダイレクト・エアー・キャプチャー(DAC)技術の研究を開始したことを発表した。この開発は内閣府が定めるムーンショット型研究開発制度「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に向けたプロジェクトの一環として取り組む。今回は東邦ガス社のDAC技術開発に関して詳細な情報を提供します。
目次
概要
東邦ガス株式会社は名古屋大学、東京理科大学、東京大学、中京大学と共同で大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収するダイレクト・エアー・キャプチャー(DAC)技術の研究を開発したと発表した。液化天然ガス(LNG)の未利用冷熱を活用して、従来のDAC技術を凌駕するエネルギー効率で高純度・高圧のに二酸化炭素を回収可能な技術(Cryo-DAC技術)の開発を目指す。この開発は内閣府が定めるムーンショット型研究開発制度「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に向けたプロジェクトの一環として取り組む。
Cryo-DAC技術の原理
「Cryo-DAC」と呼ぶ新技術は吸収液で大気中の二酸化炭素を吸収した後、LNG冷熱による二酸化炭素のドライアイス化で減圧状態を作りだし、吸収された二酸化炭素を放出させる。既存技術の化学吸収法では二酸化炭素を放出回収する際に加熱する必要があるが、Cryo-DAC技術では二酸化炭素の回収を常温付近で行えるため、消費エネルギーを大幅に削減することが出来る。また、Cryo-DAC技術で回収した二酸化炭素は高純度で高圧であり、二酸化炭素の貯留・利用が行いやすいといった特徴がある。
Cryo-DAC技術の原理
出典:https://www.tohogas.co.jp/corporate-n/press/1219823_1342.htmlより引用
下記にCryo-DAC技術の各フローを纏めた。LNGガス化の際に相当な量の冷熱エネルギーが生じるが、工業的にはほとんど利用されていない。Cryo-DAC技術はLNGガス化の際に生じる冷熱エネルギーを利用する世界的に注目される技術である。
①二酸化炭素を含む空気を吸収塔内に吸引する
②吸収液に空気中の二酸化炭素を吸引させる
③二酸化炭素を分離した空気を排出する
④吸収液を吸収塔から再生塔へ送る
⑤昇華槽(図右側)でLNG冷熱による二酸化炭素をドライアイスへ変換することで再 生塔内の圧力を低下させる
⑥再生内の圧力低下に伴い吸収液から二酸化炭素が放出される(吸収液は吸収塔へ)
⑦昇華槽と再生塔の圧力差により二酸化炭素が昇華槽へ
⑧昇華槽を密閉し、ドライアイスを気化させることで高圧の二酸化炭素を生成する
技術内容評価
【新規性】
★★★★★
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★★★★☆
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外部リンク
東邦ガス株式会社 HP
名古屋大学則永行庸研究室 HP
http://www.material.nagoya-u.ac.jp/nori_lab/
東京理科大学田中優実研究室 HP
https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/intro.php?67f9
東京大学伊藤寿浩研究室 HP
http://www.hem.k.u-tokyo.ac.jp/
中京大学山田光男研究室 HP
https://econo.chukyo-u.ac.jp/yamada/index.html
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