二酸化炭素を原料としたリチウムイオン電池向け電解液原料に関するライセンス事業を強化(旭化成)
旭化成株式会社がリチウムイオン2次電池向け電解液原料に関するライセンス事業を開始すると発表した。二酸化炭素を原料とする環境配慮型技術を強みに受注獲得を目指す。今回は旭化成のライセンス事業に関する詳細な情報を提供します。
目次
概要
旭化成株式会社がリチウムイオン2次電池向け電解液原料に関するライセンス事業を開始する。二酸化炭素を原料として使用することで環境配慮型材料として、排ガス規制強化を受けて電気自動車などの環境対応車両への普及を見込んでいる。電気自動車の普及に伴い、リチウムイオン電池向け材料も高い成長が見込まれる。製造技術のライセンス供与を実施するのはジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)。今回のライセンス事業ではDMCあるいはECの製造プラントの設計から立ち上げまで一連の流れを支援する。
旭化成の独自製法の特徴
二酸化炭素を原料として利用する
旭化成のDMC、EC製法の最大の特徴は原料に二酸化炭素を使用することだ。DMCの構成原子のうち31%が二酸化炭素由来であり、ECでは50%が二酸化炭素由来となる。そのため、リチウムイオン電池に「環境配慮型」という新たな価値を付与することが可能となる。
製造プロセスのトータルコストメリットと安全性
旭化成のDMC、EC製法の2つ目の特徴はトータルコストメリットだ。ECからDMCを製造する際にエチレングリコール(EG)が副生する。エチレングリコールは合成繊維の原料などに使用されるため、産業的な価値が高い。副生物を含めると旭化成の二酸化炭素を原料とする製造プロセスは、プロピレングリコールからDMCを製造するプロセスと比較してトータルでのコストメリットが大きい。また、一酸化炭素からDMCを製造するプロセスも存在するが、製造工程で塩素を使用するため、旭化成の二酸化炭素を原料とするプロセスは安全性が高い。
DMC、ECの市場性
世界各国で自動車の排気ガス規制が強まり、2021年には新たな廃棄ガス規制「CAFE規制」が本格施行される。こうした規制の強化から環境対応車両の投入計画が相次ぎ、リチウムイオン電池材料の市場が拡大している。一方、DMCの製造は日本と中国の化学メーカー数社に限られており、欧州からの需要が今後も増加すると推測される。
また、DMCはリチウムイオン2次電池の電解液の溶媒として利用されるだけではなく、エンジニアリングプラスチックとして有名なポリカーボネート樹脂(PC樹脂)の原料として使用されており、化学品原料としても成長が期待出来る。
事業内容評価
【新規性】
★★☆☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★★★
関連記事
二酸化炭素を原料としたエチレン合成(ブラスケム)
セメント製造工程で二酸化炭素を再資源化(NEDO)
室温条件で二酸化炭素からメタン合成(静岡大学)
外部リンク
旭化成株式会社 HP
https://www.asahi-kasei.com/jp/
宇部興産株式会社のDMC事業 HP
https://www.ube-ind.co.jp/ube/jp/news/2012/20120409_01.html