【脱石油プラ】環境配慮型素材強化(東洋紡STC株式会社)
東洋紡STC株式会社が環境配慮型素材事業を強化する。エコ需要、脱石油プラ需要向けにバイオマス由来素材や生分解性プラスチックの開発を進めている。
目次
東洋紡STC株式会社とは?
東洋紡STC株式会社は環境配慮型素材の提供を通じた環境問題解決に貢献するESG企業。ユニフォーム向けのペットボトルリサイクル素材「エコールクラブ」は1996年から展開している。また、紡績製造時に発生する未利用綿を使用した「エコット」などを展開している。
環境配慮型素材強化「エコールクラブ バイオ」の開発
アパレル業界ではSDGsの浸透により「海洋プラスチック問題」「脱プラ」に取り組む姿勢を強化しており、東洋紡STCをはじめとする素材メーカーへの要望が強まっている。こうした環境配慮型素材のニーズに応えるべく東洋紡STCは「エコールクラブ バイオ」を開発した。「エコールクラブ バイオ」はPET樹脂の原料の一部を石油由来からサトウキビの搾りかす由来のバイオマス原料に置き換え、二酸化炭素排出量の削減に貢献する。品質面では既存の「エコールクラブ」と遜色無い物性を有している。
新たな試み「D-earth(ダース)」の開発
東洋紡STCは新たな試みとして生分解性プラスチック「D-earth(ダース)」の開発を進めている。「D-earth(ダース)」は既存の石油由来プラスチックと同程度の物性を有しているが、適切な環境下で微生物により二酸化炭素と水に分解される いわゆる「生分解性」を示す。また、「D-earth(ダース)」は一般的なPET樹脂の重合に使用されるアンチモン触媒を使用せず、安価で安全性の高いアルミニウム触媒を用いて製造されるため、環境影響も低い点も注目である。
技術内容評価
【新規性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★☆☆
関連記事
・カーボンリサイクルを世界に発信(NEDO)
・廃棄プラスチックを発電燃料へ(東京理科大学発ベンチャー)
・室温条件で二酸化炭素からメタン合成(静岡大学)
外部リンク
・東洋紡STC株式会社 HP
【脱プラ】紙製バリア素材強化(日本製紙)
日本製紙株式会社は紙製バリア素材「SHIELDPLUS(シールドプラス)」の営業強化を行う。営業本部に事業推進室を設置することで営業体制を整備し、紙製バリア性素材供給による「脱プラ」に貢献する。
出典:紙製バリア素材 SHIELDPLUS(シールドプラス)より引用
目次
詳細内容
日本製紙は情報・産業用紙営業本部に「シールドプラス事業推進室」を設置して営業体制を整えた。ハイバリア(アルミ蒸着並み)フィルムと同等のバリア性を有するグレードの製品化も行っており、営業活動の活発化と量産体制の強化を進めている。
「SHIELDPLUS(シールドプラス)」とは?
「SHIELDPLUS(シールドプラス)」は水系コーティングによりバリア層を設けた環境配慮型の紙製包装材料。従来の石油系プラスチックコーティングあるいはラミネート材料は酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性が低い。「SHIELDPLUS(シールドプラス)」はバリアコーティングを施すことで紙製材料でありながら、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性の高い包装材料となる。凹凸に富む紙基材表面に密着するコーティングと迷路状に配向する無機顔料が優れたバリア性を発現する。
出典: SHIELDPLUS(シールドプラス)より引用
「SHIELDPLUS(シールドプラス)」の展開
「SHIELDPLUS(シールドプラス)」は包装材料の大部分が紙製であるため、脱プラに貢献し得る材料であるものの、バリア性コーティングに石油由来樹脂を使用いる。日本製紙社は主要構成材料をオール生分解性にすることで完全カーボンニュートラル素材達成を目指す。バリア性コーティングには三菱ケミカルの生分解性プラスチック「BioPBS」を使用したコラボ製品の開発も進めている。
技術内容評価
【新規性】
★★★★☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★★☆
関連記事
・カーボンリサイクルを世界に発信(NEDO)
・廃棄プラスチックを発電燃料へ(東京理科大学発ベンチャー)
・室温条件で二酸化炭素からメタン合成(静岡大学)
外部リンク
・日本製紙株式会社 HP
https://www.nipponpapergroup.com/
・三菱ケミカルHD HP
【天然素材】天然由来原料を用いた化粧品処方紹介(池田物産)
池田物産株式会社が天然由来原料を用いた化粧品のテクニカルセッションを開催した。世界で注目されている「オーガニックコスメ」に対応する製品の拡販に注力する。
目次
池田物産株式会社とは?
池田物産株式会社は化粧品原料、香料原料、食品原料等の幅広い素材を取り扱う素材メーカーである。近年では「オーガニックコスメ」向けとなる天然由来の素材供給を強化している。天然由来材料でありながら石油由来合成樹脂と同様の特性を発現可能な素材をラインナップしている。
天然由来材料を用いた「オーガニックコスメ」処方の紹介
今回セミナーにて池田物産が紹介したレシピは3つ。
1つ目は水素添加ホホバ油「フローラエステル70」を配合したナチュラル処方による塗布しやすく折れにくい口紅。
2つ目はエモリエント剤「フローラエステルK-20Wホホバ」を配合により耐水性を向上させ、石油唯ら合成樹脂製品と同等の化粧もちを発揮するリキッドアイブロー。
3つ目はレシチン系増粘乳化剤「ナチュライトジェルSi」配合のべたつかない天然由来原料のみからなるゲルクリーム。
天然由来材料を販売する企業が独自に開発したオーガニックコスメレシピの紹介であり、注目度が高い。
技術内容評価
【新規性】
★★☆☆☆
【経済への影響度】
★★☆☆☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★★★☆☆
関連記事
化粧品向け植物由来原料供給(GSIクレオス)
化粧品原料の生分解性予測の開発(資生堂&NITE)
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発電所の二酸化炭素削減へ(トクヤマ)
外部リンク
・池田物産株式会社 HP
【サスティナブル】王子HDバイオマスプラスチック開発プロジェクト
王子ホールディングスがサスティナブル調達を活かしたバイオマスプラスチック開発事業に取り組む。このパルプ由来プラスチックの開発事業が環境省委託事業に採択された。今回はこの開発プロジェクトを詳細にご説明します。
目次
新規開発プロジェクト発足の背景
王子HDはパルプ由来のバイオマスプラスチックの開発事業が環境省委託事業に採択されたが、その背景として、これまでに培ってきたバイオエタノール製造の開発が評価されたことがあげられる。また、王子HDは各国に多くの植林地を有していることも強みの一つとなる。
新規開発プロジェクトとは?
新たな開発プロジェクトとして「非可食性原料を用いた糖液・乳酸の発酵生成を通じたバイオポリエチレン・ポリ乳酸の製造技術開発」に挑む。世界的に流通してるバイオポリエチレン、ポリ乳酸はサトウキビを原料として製造されるため、「可食性原料使用」という大きな課題が残されている。こうした課題を王子HDの強みであるパルプを原料とすることで解決する。
このプロジェクトには王子HD以外に双日プラネットが参画する。双日プラネット社は既存のサトウキビ由来のバイオマスプラスチックの国内導入を積極的に実施しており、開発を活性化させる狙いだ。
技術内容評価
【新規性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★☆☆☆
【投資対象度】
★★☆☆☆
関連記事
・カーボンリサイクルを世界に発信(NEDO)
・廃棄プラスチックを発電燃料へ(東京理科大学発ベンチャー)
・室温条件で二酸化炭素からメタン合成(静岡大学)
外部リンク
・王子HD HP
https://www.ojiholdings.co.jp/
・双日プラネット HP
【ESG企業紹介】第4回 住友商事株式会社 (プラスチック環境対策推進タスクフォース立ち上げ)
二酸化炭素削減、廃棄プラスチック問題、海洋プラスチック問題の解決に取り組む日本の企業を紹介する企画の第4回目は環境対応ビジネスを強化し、プラスチック環境対策推進タスクフォースを立ち上げた住友商事株式会社を紹介したいと思います。
目次
住友商事株式会社とは?
住友商事株式会社は1919年に設立された総合商社であり、2020年現在の住友商事の連結子会社は663社、持分法適応会社は294社に及ぶ巨大商社である。金属事業、輸送、建設、インフラ事業、不動産、化成品、デジタル事業等幅広い事業をてがける日本を代表する大企業である。
住友商事株式会社が環境ビジネス強化へ
住友商事株式会社が環境ビジネス強化を発表した。基礎化学品・エレクトロニクス本部にプラスチック環境対策推進タスクフォースを立ち上げた。本部内で石油化成品・合成プラスチックビジネスに関わる14人で構成することで効率的にバイオマスプラスチック、生分解性プラスチック、プラスチックリサイクル技術などの環境対応策の創出に挑む。海洋プラスチックごみ問題、廃棄プラスチック問題が世界的に注目され、循環型社会実現に向けた取り組みを通じて持続的な成長を目指す。今回のタスクフォースは住友商事本部と住友グループ内で合成プラスチックビジネスをてがける住友商事ケミカルが共同で立ち上げており、推進力が高いと思われる。
終わりに筆者から
日本を代表する総合商社である住友商事株式会社がプラスチック環境対策に乗り出すことで、日本産業界にこうした取り組みが広がり、日本全体として環境問題、プラスチック問題を解決していくことに期待する。
企業のESG評価
【環境問題解決性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【安定性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★★☆
関連記事
ESG企業情報第1回目 東洋インキ株式会社
ESG企業情報第2回目 東京産業株式会社
ESG企業情報第3回目 株式会社ユポ・コーポレーション
発電所の二酸化炭素排出削減(トクヤマ)
廃棄プラスチックを用いた発電新技術
三井物産プラスチックの環境ビジネス強化に関する情報
PPHBH循環システムに関する情報
外部リンク
・住友商事株式会社 HP
https://www.sumitomocorp.com/ja/jp
・住友商事ケミカル株式会社 HP
【NEDO】セメント製造工程でカーボンリサイクル技術確立へ
経済産業省はセメント製造工程の二酸化炭素再資源化(カーボンリサイクル)技術の開発に着手する。技術開発は新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称:NEDO)の交付金事業としてプロジェクトを実施。
目次
カーボンリサイクルプロジェクト発足の背景
セメント産業は他産業から廃棄物、副生物を受け入れ、原燃料に活用して資源循環に貢献しているが、二酸化炭素排出量の面から環境に与える影響は大きい。エネルギー多量消費産業であり、セメント1 tを生産するのに二酸化炭素を600 kg以上排出する。省エネルギー化に加え、プロセス由来の二酸化炭素排出量の大幅な削減が必要である。そこで、政府が革新的環境イノベーション戦略「炭素再資源化セメントプロセス技術」を技術開発テーマに新たに加えた。経済産業省がこれを受けてカーボンリサイクルの実証プロジェクトをスタート。
カーボンリサイクルプロジェクト詳細
NEDOの交付金事業としてプロジェクト化されたカーボンリサイクル技術の確立では、セメント製造で発生する二酸化炭素を分離回収して炭酸塩として固定化、原料や土木建設資材として再資源化するCCUS一貫プロセスを目指す。技術開発の肝は化学吸着法による高効率な二酸化炭素吸着技術の確立となる。日産10 t規模の回収設備を建設し、実際にセメント製造工程に適応した場合の物質収支や熱収支を評価する。さらに、生コンスラッジに二酸化炭素を吸収させて炭酸化する技術、廃コンクリートに二酸化炭素を吸収させて炭酸カルシウムを生成してセメント原料に循環させる技術の開発を進める。プロジェクトは2020年よりスタートし、2030年を目途に実用化を目指す。予算は17憶円となる。
技術内容評価
【新規性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★☆☆☆
【投資対象度】
★☆☆☆☆
関連記事
・カーボンリサイクルを世界に発信(NEDO)
・廃棄プラスチックを発電燃料へ(東京理科大学発ベンチャー)
・室温条件で二酸化炭素からメタン合成(静岡大学)
外部リンク
・炭素循環型セメント製造プロセス技術開発(NEDO) HP
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100180.html
【環境問題】新疆ウイグル自治区で生分解性プラスチックプロジェクト開始
新疆ウイグル自治区で大規模な生分解性プラスチックに関するプロジェクトが立ち上がった。今回はこのプロジェクトについて詳細にご説明します。
目次
プロジェクト内容
新疆ウイグル自治区で大規模な生分解性プラスチックに関するプロジェクトが立ち上がった。新疆望京竜新材料有限公司が10万トンのポリブチレンアジペートテレフタレート(略称:PBAT)製造設備を建設する予定となっている。投資額は6憶5,000万円となる。
プロジェクト発足の背景
プロジェクト発足の背景に中国政府がプラスチック製品の利用を広域に規制する方針を打ち出していることが挙げられる。2025年までにワンウェイ(使い捨て)用途の石油由来プラスチック製品の生産、販売、使用を部分的に禁止・制限する方針を掲げている。石油由来プラスチックを生分解性プラスチックやバイオマス由来プラスチックへの置き換えを推奨しており、中国国内で生分解性プラスチックの需要が高まると予想される。
将来構想
このプロジェクトでは将来的に追加で60万トンのPBAT製造プラントの建設、バイオマス由来のモノマーであるエチレングリコール(略称:EG、40万トン規模)、バイオマス由来エンジニアリングプラスチック(ポリアセタール)の製造プラント(20万トン規模)の建設を構想している。投資総額は4500憶円に及ぶ。
技術内容評価
【新規性】
★★☆☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★☆☆☆☆
関連記事
海洋プラスチックごみ問題へ具体的行動計画(CLOMA)
PETボトルリサイクル会社設立情報
三井物産プラスチックの環境ビジネス強化に関する情報
PPHBH循環システムに関する情報
外部リンク
・PBAT解説ページ
https://shingi.jst.go.jp/past_abst/abst/p/15/4u/4u1904.pdf
・ミヤコ化学株式会社解説ページ
https://www.miyakokagaku.co.jp/jp/business/synthetic-resin/PBAT_20181128.pdf