バイオマス由来難重合性モノマーの効率的ポリマー化技術開発(日本触媒、理化学研究所)
株式会社日本触媒と国立研究開発法人理化学研究所がバイオマス由来の難重合性モノマーのポリマー化において効率的に高分子量化可能な技術を開発したと発表した。今回は日本触媒と理化学研究所の効率的重合技術開発に関する詳細な情報を提供します。
目次
詳細情報
株式会社日本触媒と国立研究開発法人理化学研究所がバイオマス由来の難重合性モノマーのポリマー化において効率的に高分子量化可能な技術を開発したと発表した。有機酸触媒を用いたグループトランスファー重合技術(GTP技術)を利用することで既存重合技術では達成不可能であった高分子量化に成功している。同研究開発では有機酸触媒や開始剤の置換基を検討することで温和な条件下での効率的な高分子化を達成した。今後は高分子量化に成功したバイオマス由来ポリマーの量産技術を確立し、用途開拓に挑む。
バイオマス由来難重合性モノマーとは?
今回用いたバイオマス由来難重合性モノマーは、非可食性バイオマスであるリグニン分解生成物のケイ皮酸モノマー(図1参照)である。ケイ皮酸モノマーはβ位にフェニル基が置換されたα、βー不飽和カルボン酸(β置換アクリレート)で、β位置換基の立体的、電子的な要因でラジカル重合法で高分子化が困難な難重合性モノマーに分類される。
グループトランスファー重合(GTP)とは?
グループトランスファー重合(GTP)は1980年代に開発された向山・アルドール反応(図2参照)を素反応とする精密重合法です。
出典:向山アルドール反応 Mukaiyama Aldol Reaction | Chem-Station (ケムステ)より引用
GTPの開始剤にはシリルケテンアセタール(図3参照)が用いられ、触媒としてルイス酸やルイス塩基が使用される。
また、有機分子触媒がGTPの限界を拡張しており、難重合性モノマーの精密重合を可能にした(図4参照)。
出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/53/12/53_12-3/_pdf/-char/enより引用
ケイ皮酸ポリマーの特徴
バイオマス由来のケイ皮酸ポリマーの最大の特徴は耐熱性の高さだ。GTP技術で合成されたケイ皮酸ポリマーはエンジニアリングプラスチックとして知られるポリカーボネートと同等以上の耐熱性を有している。また、多くの薬品に対する耐薬品性を有しており、高強度な材料として注目されている。
技術内容評価
【新規性】
★★★★☆
【経済への影響度】
★★☆☆☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★☆☆☆
【投資対象度】
★★★☆☆
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外部リンク
株式会社日本触媒 HP
https://www.shokubai.co.jp/ja/
国立研究開発法人理化学研究所 HP