【ムーンショット】スイッチ機能を有する海洋分解性プラスチック(北陸先端大)
北陸先端科学技術大学院大学の金子達雄教授らの研究グループが光触媒を用いて分解性を制御する海洋分解性プラスチックの開発を開始する。この開発は内閣府が定めるムーンショット型研究開発制度「生分解のタイミングやスピードをコントロールする海洋生分解性プラスチックの開発」の一環として取り組む。今回は新たな海洋分解性プラスチックの開発に関して詳細な情報を提供します。
目次
新たな海洋分解性プラスチックとは?
新たな海洋分解性プラスチックは材料としてソルガムというイネ科の植物を用いる。このソルガムからイタコン酸を合成し、光スイッチ機能を持った分子と重縮合させることで新たな海洋分解性プラスチックが得られる。この新たな海洋分解性プラスチックは水と光によって稼働するスイッチ機能を有し、分解の速度を制御することが出来るとされている。通常使用時には分解されず、海洋や自然環境に排出された場合に、太陽光と水によって分解が開始され、無毒化、軟化分解というプロセスを通じて環境に放出されても安全な海洋分解性プラスチックの開発を目指すとのこと。
現実に機能発現は可能か?
新規な海洋分解性プラスチックは光触媒によって分解の速度を制御する。強い紫外線を6時間当てることで水に溶解することを実証済みとしている。しかしながら、自然環境、特にプラスチックが行き着く深海では太陽光が届かないと考えられる。こうした極限状態で本当に海洋分解性が発現するかは疑問である。また、プラスチック表面に汚泥などが堆積することで光が届かない可能性も考えられる。
プロジェクトの課題と展望
北陸先端科学技術大学院大学の金子達雄教授らの進める新規海洋分解性プラスチックの開発は内閣府主導のムーンショット型研究開発制度「生分解のタイミングやスピードをコントロールする海洋生分解性プラスチックの開発」の一環として取り組む。ムーンショット型研究開発制度では多額の研究資金が投入されるため、開発速度は飛躍的に加速すると予想される。また、プロジェクトへ神戸大学、名古屋大学、産業技術総合研究所等の名だたる研究機関の参画が決定しており、プロジェクトの成功に期待したい。
課題としては、海洋や自然環境で生分解機能が発揮出来るかという点や大量生産に対応出来るかといった点が挙げられる。個人的には海洋や自然環境に光触媒が拡散され、堆積される危険性があるのではないかと考えてしまう。こうした課題解決に取り組み、是非とも汎用樹脂に取って代わる新規な海洋分解性プラスチックを開発して欲しい。
技術内容評価
【新規性】
★★★★★
【経済への影響度】
★★☆☆☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★☆☆☆
【投資対象度】
☆☆☆☆☆
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外部リンク
北陸先端大学 金子研究室HP
https://www.jaist.ac.jp/~kaneko/
ムーンショット型研究開発制度採択テーマ
https://www.nedo.go.jp/content/100922202.pdf
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【SDGs】環境配慮型樹脂拡大へ 伊藤忠商事
伊藤忠商事が環境配慮型プラスチックの取扱量を拡大する。オーストリアの石油化学大手メーカーのBoreails(ボレアリス)社からバイオポリプロピレンの販売権を獲得した。今回は伊藤忠商事の環境ビジネス拡大に関して詳細な情報を提供します。
出典:ポリプロピレン再生樹脂|弘英産業株式会社より引用
目次
Boreails(ボレアリス)社とは?
Boreails(ボレアリス)社はオーストリアの大手石油化学メーカーでポリエチレン、ポリプロピレンといった石油由来プラスチックを幅広く製造・販売している。このボレアリス社がフィンランドのバイオ燃料大手メーカーのネステから廃棄食用油を原料に製造されたバイオプロパンを購入。既存のプロパン脱水素法の設備で一部の原料をバイオプロパンに置換してバイオポリプロパンを製造している。原料一部をバイオマス由来に置き換えることで、マスバランス方式上「100%バイオマス由来ポリプロピレン」を製造している。また、製品は第三者認証機関から国際持続可能性カーボン認証を取得している。
マスバランス方式とは?
マスバランス方式とは投入した総原料量と生産量の収支を考慮する方式。例えば、プラスチック100 kgの製造とすると、原料となるモノマーの20 kg つまり20%にバイオマス由来を使用し、残り80%に石油由来モノマーを使用して製造する場合がある。この場合、厳密には20%バイオマスプラスチックが100 kg製造されます。ここでマスバランス方式を採用すると、生産された100 kgのプラスチックのうち、20 kgを「100%バイオマス由来プラスチック」とみなすことが出来るという概念である。マスバランスの概念は紙、電力等の業界では幅広く使用されており、プラスチック業界にも今後浸透していく可能性が高い。
マスバランス方式のバイオマスプラスチックのメリットとは?
1. トレーサビリティの確保が可能
マスバランス方式を採用した場合、再生可能原料(バイオマス由来原料)の投入量と製品の出荷量を厳密に管理する必要がある。そのため、原料調達から製品包装まですべてのバリューチェーンで第三者認証機関から監査を受けることとなる。こうした認証を取得した製品であれば、「100%バイオマスプラスチック」として安心して購入・使用することが出来る。
2. 可食原料と競合しない
現行のバイオマス由来プラスチックの多くはサトウキビやトウモロコシなどの可食資源を原料として使用している。一方、今回紹介するマスバランス方式を採用したバイオマス由来プラスチックは非可食性原料から製造される場合が多く、食品原料と競合しない強みがある。発展途上国の食料不安を助長しない点は非常に大きいと考える。
3. 既存プラントを使用可能
マスバランス方式を採用したバイオマスプラスチックの最大のメリットは既存プラントを使用して製造できる点である。基本的には石油由来原料の一部をバイオマス由来原料に置き換えるのみであり、既存プラントで問題無くプラスチックを製造することが出来る。現在普及しているバイオマス由来のポリエチレンは専用プラントを必要としており、増産が大きな課題となっている。
4. 既存プラスチックと同様の加工性や機械特性を持つ
マスバランス方式を採用したバイオマスプラスチックは、既存の石油由来プラスチックの一部をバイオマス原料に置き換えたのみであり、基本的な加工性や機械特性は既存の石油由来プラスチックと同様である。そのため、ユーザーは既存の加工ラインで最終製品を製造することが出来る。
伊藤忠商事の環境ビジネス展開
伊藤忠商事はオーストリアの石油化学大手メーカーのBoreails(ボレアリス)社からバイオポリプロピレンの販売権を獲得した。今後はマスバランス方式を適応したバイオポリエチレンや廃棄プラスチック由来の再生プラスチック材料も取り扱う計画を発表している。マスバランス方式を普及させ、将来的に環境配慮型プラスチックの取扱量を40万t/年まで引き上げる予定だ。
技術内容評価
【新規性】
★★☆☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★★☆
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外部リンク
伊藤忠商事 HP
Boreails(ボレアリス)社 HP
https://www.borealisgroup.com/
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【SDGs】東洋紡 2050年までにバイオマスプラスチック比率100%へ
東洋紡株式会社が自社フィルム製品のバイオマス化を発表した。2050年までにバイオマスプラスチック含有製品比率を100%とする方針だ。今回は製品のバイオマス化に関して詳細な情報を提供します。
目次
詳細情報
東洋紡株式会社が自社フィルム製品のバイオマス化を発表した。2050年までにバイオマスプラスチック含有製品比率を100%とする方針だ。このビックプロジェクトを成功に導く鍵となるのが、100%バイオマス由来のポリエチレンフラノエート(PEF)だ。東洋紡はポリエチレンフラノエート(PEF)技術を有するオランダのアバンティウム社と長期的なパートナーシップを構築しており、2020年2月にはアバンティウム・ジャパンを設立させた。三井物産とともにポリエチレンフラノエート(PEF)市場の開発を進めていく予定である。
ポリエチレンフラノエート(PEF)とは?
ポリエチレンフラノエート(PEF)はバイオマス由来のエチレングリコールと糖質原料から製造されるフランジカルボン酸を原料として合成される100%バイオマス由来ポリマーである。世界的に幅広く使用されているポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂に近い物性を持ち合わせ、飲料ボトルやフィルムなどへの用途展開が期待されている。最大の特徴は酸素ガスバリア機能を有している点で、PET樹脂と比較してポリエチレンフラノエート(PEF)は酸素ガスバリア性が10倍程度高いことが確認されている。バイオマス率100%でありながら、ガスバリア性を有する期待の素材である。
技術内容評価
【新規性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★☆☆☆☆
【投資対象度】
★☆☆☆☆
筆者の個人的な意見(あくまで個人の意見です)
ポリエチレンフラノエート(PEF)はバイオマス由来でバリア性が高く、世界的に注目されている材料である。ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂の代替素材としても期待されているが、コスト面や供給面からポリエチレンフラノエート(PEF)プロジェクトの断念が続いている。また、世界的に幅広く使用されているPET樹脂の置き換えとなるとそのハードルは一段と高くなると想像できる。もちろん注目素材ではあるが、ポリエチレンフラノエート(PEF)関連の投資には慎重になるべきだろう。
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東洋紡株式会社HP
Avantium(アバンティウム)社HP
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【生分解性プラ】酢酸セルロースベース「NEQAS OCEAN」
株式会社ダイセルと三和商会が生分解性バイオマスプラスチック「NEQAS OCEAN」を共同開発した。天然由来の生分解性プラスチックは新型コロナウイルス感染拡大で進む”使い捨て容器の見直し"を背景に、アフターコロナ、ウィズコロナ時代に対応し得るエコ材料の供給を狙っている。今回は「NEQAS OCEAN」に関して詳細な情報を提供します。
引用:NEQAS OCEAN | 三和商会グループHPより引用
目次
詳細内容
「NEQAS OCEAN」は株式会社ダイセル社の酢酸セルロースと可塑剤、三和商会のコンパウンド技術を掛け合わせることで優れた成形性や物性を有する天然由来プラスチックである。食品包装材料を中心に用途展開を行っている。可塑剤を30%程度配合した「OCEAN100」やタルクを30%混合することで曲げ弾性率を高めた「OCEAN30T」をラインナップしている。
「NEQAS OCEAN」とは?
「NEQAS OCEAN」は木由来のパルプを原料として製造される天然由来プラスチックである酢酸セルロースを主材として使用している。酢酸セルロースは強度や透明性が高いといった特性を有しており、「NEQAS OCEAN」も同性能を有している。また、生分解性や海洋分解性が確認されており、新たな海洋分解性プラスチックとして期待される。この酢酸セルロースに三和商会のコンパウンド技術を用い、ダイセルが手掛ける安全性が高い可塑剤をコンパウンドすることで、優れた機械特性を発現させることが可能となっている。実際に「NEQAS OCEAN」の成形材料は耐熱性、耐溶出性、耐臭性などの特性がコンパウンドにより付与され、射出成型や押出成形に対応可能な樹脂物性となっている。
「NEQAS OCEAN」の展開
「NEQAS OCEAN」は食品包装材料やワンウェイ用途のプラスチック成型体への応用が期待されるため、射出成型性や押出成形性を高めていくとのこと。また、海洋分解性が2倍となる酢酸セルロースの適応を検討するとのこと(おそらくアセチル置換度を低下させ、海洋分解速度を上げると筆者は推測)。アフターコロナ、ウィズコロナ時代に対応し得るエコ材料として展開されるだろう。
技術内容評価
【新規性】
★★☆☆☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★☆☆
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株式会社ダイセル HP
三和商会グループ HP
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【新素材】CirculeX(サーキュレックス)株式会社TBM
石灰石を主原料とする「LIMEX(ライメックス)」を製造・販売する株式会社TBM社が再生材料のニーズに応える新ブランド「CirculeX(サーキュレックス)」を立ち上げた。今回は「CirculeX(サーキュレックス)」に関して詳細な情報を提供します。
出典:LIMEX(ライメックス)より引用
目次
詳細内容
これまで株式会社TBM社は「LIMEX(ライメックス)」を末端ユーザーへ販売してきたが、素材としての展開を行うため、「LIMEX(ライメックス)」を含有するマスターバッチグレードの開発を進めていた。顧客へのワークを通じ、廃棄プラスチックの再生を求める事業者の要望に応えるべく新たに「CirculeX(サーキュレックス)」ブランドを立ち上げた。「CirculeX(サーキュレックス)」は様々な工場から排出される廃棄プラスチックを50%以上含む新素材で、リサイクル製品として期待される。
TBM社は「CirculeX(サーキュレックス)」の製造・販売のためにプラスチック排出業者、廃プラスチック回収業者と連携し、安定的に廃プラスチックを確保する。また、今回の「CirculeX(サーキュレックス)」事業を通じて廃プラスチック事業のみならず「LIMEX(ライメックス)」の回収も強化し、資源循環社会に貢献する。
技術内容評価
【新規性】
★★★★☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★★★☆☆
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株式会社TBM HP
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【技術革新】安価なセルロースナノファイバー供給へ(東亜合成)
東亞合成株式会社が二酸化炭素の負荷が少なくセルロースナノファイバーを低コスト化する技術を発表した。セルロースナノファイバーの低コスト化が実現出来れば、セルロースナノファイバーの実用化が進すむ可能性が高い。今回は東亞合成株式会社の新規技術について詳細な情報を提供します。
出典:CO2負荷の少ないCNF 東亞合成株式会社より引用
目次
東亞合成株式会社とは?
東亞合成株式会社は1994年に設立された化学品メーカーで、水酸化ナトリウムや次亜塩素酸ナトリウムなどの基幹化学品やアロンアルファで知られる瞬間接着剤などを製造販売している。売上高は1,500億円にのぼり、中期経営計画では高付加価値品事業の拡大やサスティナブル経営の推進を目標に掲げている。
東亞合成株式会社が挑む二酸化炭素負荷の少ないセルロースナノファイバー事業とは?
東亞合成社は2020年11月末に二酸化炭素負荷の少ないセルロースナノファイバー開発についてプレスリリースを行っている。プレスリリースの内容の要点を以下に纏めた。
東亞合成社はセルロースナノファイバーの権威である東京大学磯貝研究室と共同研究のもと、従来のTEMPO酸化セルロースナノファイバーと同程度解繊可能で、低コストな酸化セルロースナノファイバーを開発した。従来の物理解繊セルロースナノファイバーやTEMPO酸化セルロースナノファイバーは解繊時に多大なエネルギーが必要とされ、多くの二酸化炭素を排出してしまうことや製造コストが嵩むといった課題があった。
そこで、東亞合成社は自社で製造している次亜塩素酸ナトリウムを酸化剤として利用し、パルプを低コストで酸化。酸化により生じるカルボキシル基が電子的に反発することで、少ないエネルギーでセルロースナノファイバーまで解繊することが出来る。この酸化型セルロースナノファイバーは既存のセルロースナノファイバーと比較して5分の1程度まで価格を下げることができ、kg当たり数千円での製造の実現も可能とみている。また、通常のセルロースナノファイバーの固形分濃度が1~5%程度であるのに対し、酸化型セルロースナノファイバーは15%程度の固形分濃度での提供が可能であり、輸送面でもメリットがあると考えられる。
技術内容評価
【新規性】
★★★★☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★★★☆☆
筆者の個人的な意見(あくまで個人の意見です)
国策として推し進められているセルロースナノファイバー事業ですが、現状kg当たり数十万円とコストの面から普及が進んでいません。また、基本的には水分散体での供給となるため、流通においても課題がある。バイオマス素材として期待しているだけに今後の展開に期待したい。東亜合成の新規技術によりセルロースナノファイバーの低コスト化が実現し、幅広くセルロースナノファイバーが普及することを願い、投資対象としたいと思います。
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外部リンク
東亜合成株式会社HP
東京大学 磯貝研究室HP
http://cellulose.fp.a.u-tokyo.ac.jp/
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【海洋分解プラ】伊藤忠商事 ラクティプス独占販売権取得
伊藤忠商事が乳タンパク質のカゼインを原料とした生分解性(海洋分解性)プラスチックを製造・販売するフランスのラクティプス社が開発した「Lactips(ラクティプス)」の国内独占販売権を取得した。今回は伊藤忠商事の環境ビジネス拡大に関して詳細な情報を提供します。
目次
ラクティプス社とは?
ラクティプス社はフランスのジャンモネ大学発のベンチャー企業。乳タンパク質のカゼインを原料とした新たな生分解性プラスチックの製造を行っている。生産能力は1,500トン/年とまだまだ少ないものの、世界中から注目される新素材を製造する化学メーカーである。
カゼインを原料とした新たな材料の特徴とは?
最大の特徴は乳タンパク質のカゼイン由来のプラスチックであるため、バイオマス由来のプラスチックであり、生分解性、海洋分解性を示すことだ。また、低温で水溶性を示す。機能性としてガスバリア性(酸素ガスを通過し難くする性質)を有している。熱成形や押出成形が可能であり、既存設備で成形加工できることも普及を後押しするだろう。近年、一般家庭で堆肥化可能であることを示す OK Compost Home認証も取得している。驚くべきことに、Lactips(ラクティプス)は乳タンパク由来のプラスチックであるため、食べることが可能な程安全性が高い。
Lactips(ラクティプス)の課題と展望
Lactips(ラクティプス)は海洋分解性、可食性を示す非常にユニークな材料である。しかしながら、いくつか課題が挙げられる。1つ目は可食素材を原料とするため、世界的な飢餓問題のやりだまにあげられる可能性がある。ラクティプス社は余剰状態にあり、廃棄されてしまうカゼインの新たな使い道として開発を進めているが、食物問題が障壁となる可能性が考えられる。2つ目は供給体制だ。欧州ではラクティプス社とBASF社とが取り組みを始めており、年産1,500トンのペレット生産ラインを保有しているとされるが、世界で年間消費されるプラスチック総量4憶トンから比べると不十分であることは明確であり、汎用樹脂として供給することは不可能であると考えられる。
伊藤忠商事とラクティプス社との関係
伊藤忠商事は環境ビジネス強化の一環として、ラクティプス社と海洋分解性プラスチック(ラクティプス)の日本国内独占販売契約を締結した。すでにマーケティング活動を開始しており、紙製パッケージのコーティング剤、食品包装材料などに可能性を見出している。
技術内容評価
【新規性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★★★
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伊藤忠商事 HP
ラクティプス社 HP