カーボンニュートラル宣言(エンビプロ・ホールディングス)
株式会社エンビプロ・ホールディングスは2050年までにカーボンニュートラル化することを宣言した。廃棄物処理、リサイクル事業など全事業から排出される温室効果ガス実質ゼロを目指す。今回はエンビプロ・ホールディングス社のカーボンニュートラ宣言に関する詳細な情報を提供します。
株式会社エンビプロ・ホールディングスとは?
株式会社エンビプロ・ホールディングスは世界が直面する物質資源の枯渇、地球温暖化による気候変動に関する社会課題を解決することを目的とし、リサイクル・リユース事業といった資源循環事業を行っている。また、グローバル資源循環事業ではリサイクル材や再生原料の流通をグローバルに展開し、国を超えたリサイクルシステムの構築に貢献している。
カーボンニュートラル宣言の内容
エンビプロ・ホールディングス社は、2016年のパリ協定の締結や世界的な脱炭素化の進行を受け、2050年までに同グループ内で行うスクラップや廃棄物の処理、リサイクルなどを含む全事業から排出される温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを宣言した。
エンビプロ・ホールディングス社は2050年までにカーボンニュートラル化を達成するため、加盟している2050年までに100%再生可能エネルギーにすることを目標とする「RE100」の目標年度を20年前倒し、2030年までの達成に目標を再設定し直した。同社ではメガソーラーパネルの導入を進めており、2018年度の使用電力中に占める再生可能エネルギー割合が2.9%であったのに対し、2019年度は17.8%と大幅に増加させている。
技術内容評価
【新規性】
★★☆☆☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★★☆☆☆
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カーボンニュートラル素材「ベロセア」(ダイセル)
外部リンク
株式会社エンビプロ・ホールディングス HP
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循環システムの確立に向けた最先端材料の開発を加速(東レ)
東レ株式会社は持続的な成長を実現するため、炭素繊維や分離膜技術を駆使した燃料電池関連や超高透水ナノ濾過膜(NF膜)等の開発を加速している。今回は東レ社の循環システム確立に向けた最先端材料の開発について詳細な情報を提供します。
目次
詳細情報
東レ株式会社は水素や資源など新たな循環システムの確立に向けた最先端材料の開発を加速する。東レ社が持つ炭素繊維や分離膜の技術を駆使し、燃料電池関連と超高透水ナノ濾過膜(NF膜)の事業化に向けた開発を行う。最先端材料の持続的な創出を通じてSDGs達成に貢献していく。
燃料電池に関する技術開発
燃料電池関連では再生可能エネルギーと水素を利用する社会の実現を想定し、水素製造装置や家庭用燃料電池向けの電解質膜や水素タンク用樹脂の事業化を計画している。2019年に設立した「未来創造研究センター」で燃料電池車(FCV)用の電解質膜や電極基材、水素圧縮用電解質膜などを推進テーマに掲げ、継続的な研究・開発を実施している。東レ社の持つ炭素繊維や樹脂フィルム技術を駆使した技術開発を行うことで早期(2022年まで)の事業化を目指す。
超高透水NF膜に関する技術開発
中長期的な取り組みとして超高透水NF膜の事業化に向けた開発を実施。超高透水NF膜を利用して塩湖からリチウムを高効率で回収し、需要が拡大する電気自動車(FCV)に搭載するリチウムイオン2次電池向けにリチウムを供給する計画だ。既存のリチウム回収手法は塩湖水を濃縮し、薬剤精製するプロセスが用いられるため、高コストで適応可能な塩湖(リチウム含有濃度が高い塩湖)が限定されるといった課題がある。一方、超高透水NF膜を用いる手法ではリチウム濃度の低い塩湖への適応や低コスト化が期待される。
東レ社では細孔径の制御と高表面化の両立に成功しており、既存のNF膜の3倍の透水性を実現している。さらなる技術改善に取り組み、塩湖からの効率的なリチウム回収を視野に入れている。
出典:世界最高レベルの超高透水性ナノろ過(NF)膜を創出より引用
技術内容評価
【新規性】
★★★★★
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★★★☆☆
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東レ株式会社 HP
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酢酸セルロース微粒子「ベロセア」の開発事業が環境省委託事業に採択(ダイセル)
株式会社ダイセルは化粧品原料となる酢酸セルロース真球状微粒子「ベロセア」の開発事業が環境省委託事業に採択されたことを発表した。海洋分解性・生分解性を有し、オーガニックコスメ素材としても注目される「ベロセア」に関する詳細情報を提供します。
目次
詳細情報
株式会社ダイセルは酢酸セルロース微粒子「ベロセア」をマイクロプラスチックによる海洋汚染問題が注目されるなか、自然循環型素材として開発を加速させる。
ダイセルとセルロース材料
ダイセル社は以前から口腔内崩壊錠用賦形剤として微結晶セルロースを製品化しており、セルロースの高い加工技術を有している。2021年2月時点でセルロースに関する特許出願は318件、2020年末~2021年1月には立て続けに酢酸セルロースに関する出願特許が公開されており、酢酸セルロース事業へ注力していることが伺える。また、ダイセル社と三和商会は共同で生分解性バイオマスプラスチック「NEQAS OCEAN」を開発している(詳細はこちらの記事を参照)。
真球状酢酸セルロース微粒子「ベロセア」
真球状酢酸セルロース微粒子BELLOCEA(ベロセア)が2020年度の環境省委託事業「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」に採択された。ベロセアはオーガニックコスメ素材としても注目されています(詳細はこちらの記事を参照)。
ベロセアはバイオプラスチック協会(JBPA)からバイオマスプラスチック及び生分解性プラスチックとしての認証を取得している。ファンデーションや日焼け止め用途以外にも基礎化粧品分野への用途拡大を見込んでおり、「オーガニック」「自然循環材料」をキーワードに環境意識の高い顧客の取り込みを行う予定。
技術内容評価
【新規性】
★★★★☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★★☆
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外部リンク
株式会社ダイセル HP
三和商会グループ HP
環境省「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」
https://www.env.go.jp/press/107210.html
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農業・食品廃棄物を原料とするメタン発酵やバイオガス発電事業強化へ(鈴与商事)
鈴与商事株式会社がメタン発酵やバイオガス発電の知見を育成する。鈴与菊川バイオガスプラントでのプロジェクトが化学技術振興機構のA-STEPに採用された。農業・食品廃棄物を原料とするカーボンニュートラルなバイオガス発電が期待される。今回は鈴与商事のバイオガス発電に関する詳細な情報を提供します。
鈴与菊川バイオガスプラントの外観写真
出典:鈴与菊川バイオガスプラントにおける共同プロジェクトの 「A-STEP(研究成果最適展開支援プログラム)」採択について|プレスリリース|鈴与商事株式会社より引用
目次
詳細情報
鈴与商事株式会社がメタン発酵やバイオガス発電事業を強化する。鈴与菊川バイオガスプラントでの研究プロジェクトが科学技術振興機構のA-STEP(研究成果最適展開支援プログラム)に採用された。鈴与菊川バイオガスプラントでのプロジェクトは産業技術総合研究所、静岡県工業技術研究所、鈴与総合研究所と共同で実施する。
出典:鈴与商事ニュースリリースより引用
鈴与商事は2016年から鈴与菊川バイオガスプラントを稼働しており、農業・食品廃棄物を原料としてメタン発酵を行うことで微生物の力でバイオガスを製造している。農業・食品廃棄物としては静岡県内企業のベルファーム株式会社から排出されるトマトの茎根やエスエスケーフーズ株式会社から排出される食品残渣を使用している。
出典:鈴与菊川バイオガスプラントにおける共同プロジェクトの 「A-STEP(研究成果最適展開支援プログラム)」採択について|プレスリリース|鈴与商事株式会社より引用
鈴与総合研究所が農業・食品廃棄物を原料とした発酵プロセスの発酵槽内の理化学分析を実施し、プラント運転を実施してきたが、微生物の機能予測は複雑系で理化学分析は不十分であった。そこで、産業技術総合研究所が有する大規模RNA/DNA解析技術を駆使し、良好な菌叢や微生物機能が維持されるプラント運営条件を探る。メタン発酵の管理精度の飛躍的な向上が期待され、廃棄物の分解効率やバイオガスの発生量が向上が見込まれる。
技術内容評価
【新規性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★☆☆☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★☆☆
関連記事
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外部リンク
鈴与商事株式会社 HP
https://www.suzuyoshoji.co.jp/
産業技術総合研究所 HP
静岡県工業技術研究所 HP
https://www.iri.pref.shizuoka.jp/
ベルファーム株式会社 HP
エスエスケーフーズ株式会社 HP
https://www.sskfoods.co.jp/home/
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環境配慮型メガネを開発(内田プラスチック)
プラスチック成型加工メーカーである有限会社内田プラスチックが環境配慮型で独自性の高いメガネの展開を強化する。環境配慮型でありながら低価格を実現し、中国品とも戦える商品を開発した。今回は内田プラスチック社の環境配慮型のメガネ開発について詳細な情報を提供します。
目次
内田プラスチックとは?
有限会社内田プラスチックは福井県鯖江市に位置する1959年創業のプラスチック成型加工メーカー。主力製品は越前漆器、プラスチック食器で、生産ラインへのロボットの活用を古くから行い、中国品と価格で勝負している。メガネ事業は2018年に参入し、環境配慮型素材の採用を積極的に実施している。
内田プラスチックの環境配慮型メガネとは?
内田プラスチック社ではメガネフレームにPETボトルのリサイクル樹脂を90%採用しており、レンズには生分解性を有するバイオレンズを選択することが可能となっている。また、使用後に廃棄する際には使用済みのメガネを回収し、トレーやメガネケースにリサイクルするスキームを構築している。最大の特徴は環境配慮型メガネでありながら、レンズ込みで500円程度で販売しており、安価な中国品と戦える商品となっている。同環境配慮型リサイクル樹脂メガネは国際メガネ店「第24回メガネ大賞2021」、「海ごみゼロアワード」イノベーション部門を受賞している。
技術内容評価
【新規性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★★
【実現性】
★★★★★
【投資対象度】
★★★☆☆
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ケミカルリサイクル技術(住友化学)
再生PET樹脂事業へ参画(蝶理)
PETリサイクル会社設立(協栄J&T環境)
廃棄プラスチックで発電(アクテイブ)
外部リンク
有限会社内田プラスチック HP
第24回メガネ大賞2021 HP
https://www.ioft.jp/ja-jp/Concurrent-Events/award/winners.html
海ごみゼロアワード2020 HP
https://uminohi.jp/umigomizero_award2020/announcement2020.html
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欧州のプラスチックリサイクル率に関する最新情報(2021年2月現在)
欧州プラスチック製品工業会が最新の廃プラスチック処理割合を発表した。今回は廃プラスチック処理に関する最新情報を提供します。
目次
詳細情報
2018年度のEU加盟国+ノルウェー+スイスの廃プラスチック処理方法のうち、リサイクルが占める割合は3割弱、エネルギー化(焼却処分)は4割弱と課題が浮き彫りとなった。EUは2030年までに廃プラスチックの5割以上をリサイクルとする目標を掲げているが、達成までの道のりは険しい。リサイクルされた廃プラスチック総量は291万トンで統計を開始した2006年と比較して19%増加している。しかしながら、リサイクルの内訳に中国への資源としての輸出が含まれており、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル率は極めて低いと推測される。実際に、中国が2017年から段階的に廃プラスチックの輸入を禁止しており、EUのリサイクル率の成長が鈍化していることから、中国への廃プラスチック輸出に大きく依存していることが伺える。EU内においても規制レベルが異なっており、ドイツ、オーストリアなどは厳しい廃プラスチック規制を行っているため、リサイクル率が50%を越えている。一方、ギリシャなどの東欧ではリサイクル率が低い結果となっている。今後、EU全体としてどのような規制を設けていくか注視すべきだろう。
情報内容評価
【新規性】
★☆☆☆☆
【経済への影響度】
★★☆☆☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★☆☆☆
【投資対象度】
★★★☆☆
関連記事
カーボンリサイクル技術情報
再生PET樹脂事業情報
PETボトルリサイクル会社設立情報
三菱ケミカルHD ラクティプス社へ出資
三井物産プラスチックの環境ビジネス強化に関する情報
PHBH循環システムに関する情報
外部リンク
欧州プラスチック戦略(経済産業省) HP
http://www.3r-suishinkyogikai.jp/data/event/H29R22.pdf
欧州プラスチック戦略解説(粟生木千佳 氏 著書) HP
http://jsmcwm.or.jp/edit/kurashi/09/076aoki.pdf
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トリニダード・トバゴで100万トン規模のメタノール製造工場稼働(三菱ガス化学、三菱重工エンジニアリング、三菱商事)
トリニダード・トバゴで三菱ガス化学株式会社、三菱重工エンジニアリング株式会社、三菱商事株式会社が共同で出資するメタノールの新工場が商業運転を開始すると発表した。次世代エネルギーとして注目される水素の運搬手段などにも使用されるメタノールはSDGsの観点からも産業的な価値が高い。今回は基礎化学品として注目されるメタノールの大規模な新規工場稼働に関する情報を提供します。
出典:三菱重工 | トリニダード・トバゴ共和国におけるメタノール/ジメチルエーテルプラントの商業運転開始についてより引用
目次
詳細情報
トリニダード・トバゴで三菱ガス化学株式会社、三菱重工エンジニアリング株式会社、三菱商事株式会社が共同で出資するメタノールの製造新工場が商業運転を開始すると発表した。メタノール新工場への投資総額は1,000億円程度で各社の出資額は、三菱ガス化学が270憶円、三菱重工エンジニアリングが180億円、三菱商事が270憶円、現地企業が300億円程度。新工場のメタノール生産能力は100万トン/年で、80%にあたる80万トンを三菱ガス化学と三菱商事が半量ずつを販売する。
メタノールの用途
メタノールは基礎化学品に分類され、接着剤、農薬、塗料、合成樹脂、合成繊維、心臓病薬の原料等、様々な分野に原料として利用されている。また、船舶燃料としての利用や注目素材の水素の運搬手段としても使用される。
メタノール誘導体
- ホルムアルデヒド
- 酢酸
- ジメチルエーテル(DME)
- メタノール由来オレフィン(MTO)
- メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)
- テレフタル酸ジメチル(DMT)
- メタクリル酸メチル(MMA)
- メチルアミン
メタノールの市場情報
メタノールの世界需要は8,100万トン/年(2020年度)で、2021年以降も市場成長が見込まれている。しかしながら、新型コロナウイルスの影響で10円/kg程度価格が低下しており、メタノール製造最大手メタネックス社がトリニダード・トバゴのメタノール工場を停止するなど、今後の市場動向は注視すべきだろう。
技術内容評価
【新規性】
★☆☆☆☆
【経済への影響度】
★★☆☆☆
【SDGs貢献度】
★★☆☆☆
【実現性】
★★★★★
【投資対象度】
★★☆☆☆
関連記事
ケミカルリサイクル(住友化学)
エネルギー転換(経済産業省)
外部リンク
三菱ガス化学株式会社 HP
三菱重工エンジニアリング会社 HP
https://www.mhi.com/jp/group/mhieng/homepage
三菱商事株式会社 HP
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/