100%バイオペット実用化へ 東洋紡
東洋紡株式会社が100%植物由来のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)の重合に成功したと発表した。植物由来PET樹脂を足掛かりに循環型社会の実現に貢献していく。今回は東洋紡社の植物由来PET重合に関する詳細な情報を提供します。
出典:植物由来の素材だけを使用したPET樹脂の重合に成功~植物由来原料100%使用ペットボトルの開発に貢献~ | ニュースリリース | 東洋紡より引用
目次
東洋紡株式会社とは
東洋紡株式会社はフィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンス分野における各種製品の製造、加工、販売を行う化学メーカー。プラント機器の設計、製作、販売も手掛ける。近年ではサスティナブル素材の開発を積極的に行っている注目企業。
詳細情報
東洋紡株式会社が100%植物由来のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)の重合に成功したと発表した。東洋紡は高度な重合技術を活用し、植物由来のテレフタル酸と植物由来エチレングリコールとの重合に成功。
サントリーグループとアメリカのバイオベンチャーのアネロテック社が試作した100%植物由来のテレフタル酸を原料として用いている。アネロテック社はテレフタル酸の粗原料であるパラキシレンを非可食原料であるウッドチップから生成する独自技術を有している。
東洋紡社は2050年までに全フィルム製品のバイオマス化を掲げており、循環型社会の実現に貢献していく方針。また、同様の重合技術を活かし、ガスバリア性を兼ね備えたポリエチレンフラノエート(PEF)の実用化も推進していく。
技術内容評価
【新規性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★☆☆
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Anellotech Inc.(アネロテック) HP
サントリーホールディングス株式会社 HP
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【SDGs】次世代バイオ燃料でトライアル運航(商船三井、ユーグレナ)
株式会社商船三井と株式会社ユーグレナが次世代バイオ燃料「ユーグレナバイオディーゼル燃料」による船舶のトライアル運航を実施した。次世代バイオ燃料を使用することで温室効果ガス(GHG)ゼロエミッションを目指す。今回は商船三井社とユーグレナ社の取り組みについて詳細な情報を提供します。
出典:名古屋港初、商船三井グループ運航船において ユーグレナバイオディーゼル燃料にてトライアル航行を実施 | 株式会社ユーグレナより引用
目次
詳細情報
商船三井社とユーグレナ社が次世代バイオ燃料「ユーグレナバイオディーゼル燃料」による船舶のトライアル運航を実施した。今回のトライアル運航では名古屋港港湾管理者(名古屋港管理組合)の後援を受けている。ユーグレナ社のバイオジェット・ディーゼル燃料実証プラントから燃料を輸送、停泊中のタグボートに供給した。今回の取り組みを通じて温室効果ガスゼロエミッション実現を目指すとともに、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指す。
「ユーグレナバイオディーゼル燃料」の特徴
・既存のディーゼル燃料と同様に使用することが可能
・重油と比較して硫黄分含有量が少なく、厳格化するSOx規制に対応
・燃焼時の温室効果ガス(GHG)排出量を削減可能
・環境負荷が低い
技術内容評価
【新規性】
★★★★☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★★★☆☆
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株式会社商船三井 HP
https://www.mol.co.jp/index.html
株式会社ユーグレナ HP
名古屋港管理組合 HP
https://www.port-of-nagoya.jp/
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【石油化学】シンガポールにプロパン脱水素設備建設へ(住友化学)
住友化学株式会社がシンガポールの石油化学コンプレックス内にプロパン脱水素(PDH)設備の建設計画を発表した。副生した水素と工場から排出される二酸化炭素からメタノールを製造することで、石油化学コンプレックスの経済性向上と環境負荷低減を同時に達成出来る可能性がある。今回は住友化学社のプロパン脱水素(PDH)プロジェクトについて詳細な情報を提供します。
目次
PDH設備建設計画の背景
シンガポールでは近年、プロピレンが約30万トン/年 不足している。今後も世界的にシェールガス由来のエタンを分解する動きが増え、プロピレンの増産は少なる見通しだ。そのため、液化石油ガス(LPG)を原料とするPDH設備によりプロピレン不足を解決する狙いがある。
詳細情報
住友化学社がシンガポールの石油化学コンプレックス内にPDH設備を建設する。環境負荷低減と経済成長の両立を図るプロジェクトとして、シンガポール経済開発庁から減税などの支援を受ける。住友化学社はシンガポール内にシンガポール石油化学株式会社、ザ・ポリオレフィン・カンパニー社、住友化学アジア社などのグループ会社があり、石油化学コンプレックスを形成している。不足するプロピレンの製造としては、PDH設備から副生する水素と工場から排出される二酸化炭素からメタノールを製造し、プロピレンに変換することを検討する。プロピレン供給と同時に二酸化炭素排出量の10%削減を目標とする。
二酸化炭素からメタノールの効率的な合成法確立
住友化学社は島根大学と共同で水素と二酸化炭素から効率的にメタノールを合成する技術開発を平行して実施している。この技術をPDH設備建設プロジェクトに適用し、PDH設備から副生する水素と工場から排出される二酸化炭素から効率的にメタノールを製造可能化検討中である。
技術内容評価
【新規性】
★★★☆☆
【経済への影響度】
★★★★☆
【SDGs貢献度】
★★☆☆☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★★★★☆
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外部リンク
住友化学社 HP
https://www.sumitomo-chem.co.jp/
島根大学 HP
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ウレタン樹脂硬化剤の環境対応製品を拡充(旭化成)
旭化成株式会社が自動車用塗料などの原料となるウレタン樹脂硬化剤の環境対応製品を拡充する。世界的な環境規制の強まりやカーボンニュートラルの潮流を捉えて収益拡大を目指す。今回は旭化成の環境対応製品拡充に関する詳細情報を提供します。
目次
詳細情報
旭化成株式会社の樹脂硬化剤「デュラネート」はポリイソシアネートに脂肪系イソシアネートのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を結合させたオリゴマーで、ポリオールとの反応で3次元架橋構造を有するウレタン樹脂にすることが可能。様々な環境対応デュラネートシリーズをラインナップしている。継続定期な技術開発を行い、デュラネート全体に占める環境対応製品の比率を50%以上に高める計画を立てている。
低粘度タイプのデュラネートシリーズ
デュラネートの低粘度タイプ「TUL-100」「TLA-100」は希釈用の有機溶媒量を減らすことが可能となり、VOC(揮発性有機溶媒)の排出を15~20%程度抑制することが出来る。希釈する有機溶媒が少ないため平滑性が高まり、塗装がより綺麗に仕上がることも大きな特徴である。
水系塗料「Wシリーズ」
旭化成は環境対応製品として水分散グレード「Wシリーズ」を拡充している。ウレタン樹脂の構造中に水酸基を持たせることで親水性を高め、用途に合わせて耐候性や密着性などの機能を付与している。環境意識が高く、水系塗料の普及が進む自動車の中塗り塗装やベース塗装などの用途向けに採用を狙う予定。
低温タイプのブロックイソシアネートの開発
ブロックイソシアネートは付加反応に関わる部分を封止材で保護し、熱をかけると封止材が外れてウレタン樹脂の硬化が始まる製品。1液型の塗料はポットライフが長く、自動車の中塗りやベース塗装などでも普及している。旭化成が展開する低温タイプのブロックイソシアネートは樹脂の硬化温度が90℃で、従来製品と比較して30~40℃程度低い温度で硬化が可能。焼き付け温度が下がるため、塗装工程の二酸化炭素排出量を削減することが出来る。
技術内容評価
【新規性】
★★☆☆☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★★☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★☆☆
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外部リンク
旭化成株式会社 HP
https://www.asahi-kasei.com/jp/
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DIC リサイクル事業に注力「ケミカルリサイクルでエフピコと協業検討」
DIC株式会社が技術開発で環境問題を解決する意向を強めている。パッケージリサイクル分野に注力する。特にポリスチレン容器包装の完全循環システム構築に株式会社エフピコとの協業検討を開始する。今回はDIC社の環境ビジネスについて詳細な情報を提供します。
出典:DIC株式会社より引用
目次
会社情報
DIC株式会社が技術開発で環境問題を解決する意向を強めている。「次世代パッケージ領域」ではリサイクルプロセスの開発に注力する。インキ・接着剤・フィルム・プラスチック成型をすべて事業として持つDIC社の総合力を生かし、新たな総合技術プラットフォームに統合する開発に挑戦する。
DIC社のリサイクル技術開発
リサイクル技術に関しては2020年度から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発プロジェクト」に参画する。プラスチック材料の再生プロセス開発に携わり、複層フィルムの剥離や加工工程での熱履歴改善の開発を担う。
さらにケミカルリサイクルを重点領域とし、エフピコ社との協業検討に結実。エフピコ社が主製品として取り扱うポリスチレン製の食品容器包装の完全循環システムの構築に向けて実証設備の建設を行う予定。また、独自にPET樹脂のケミカルリサイクル技術を開発しており、ケミカルリサイクルPETを使用したドライラミネート接着剤の製品化に成功している。
DIC社の生分解性プラスチック事業
DIC社が重点分野の一つであるバイオ化学分野では外部との連携を強化している。1つ目は東南アジアなどのプラスチックの回収・リサイクル体制が未整備の地域での生分解性プラスチック需要の獲得だ。既存の生分解性プラスチックとして普及しているポリ乳酸が持つ課題(成形性、力学物性など)を解決し得る新たな生分解性プラスチックの開発に挑戦する。2つ目は天然素材由来のポリアスパラギン酸の開発。東大発ベンチャー企業のGreen Earth Institute社と協業で開発する。高吸水性樹脂として生分解性紙おむつへの利用を想定した検討を衛生用品メーカーと実施している。
技術内容評価
【新規性】
★★★★☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★★★☆
【投資対象度】
★★★★☆
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外部リンク
DIC株式会社 HP
https://www.dic-global.com/ja/
株式会社エフピコ HP
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) HP
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バイオマス由来難重合性モノマーの効率的ポリマー化技術開発(日本触媒、理化学研究所)
株式会社日本触媒と国立研究開発法人理化学研究所がバイオマス由来の難重合性モノマーのポリマー化において効率的に高分子量化可能な技術を開発したと発表した。今回は日本触媒と理化学研究所の効率的重合技術開発に関する詳細な情報を提供します。
目次
詳細情報
株式会社日本触媒と国立研究開発法人理化学研究所がバイオマス由来の難重合性モノマーのポリマー化において効率的に高分子量化可能な技術を開発したと発表した。有機酸触媒を用いたグループトランスファー重合技術(GTP技術)を利用することで既存重合技術では達成不可能であった高分子量化に成功している。同研究開発では有機酸触媒や開始剤の置換基を検討することで温和な条件下での効率的な高分子化を達成した。今後は高分子量化に成功したバイオマス由来ポリマーの量産技術を確立し、用途開拓に挑む。
バイオマス由来難重合性モノマーとは?
今回用いたバイオマス由来難重合性モノマーは、非可食性バイオマスであるリグニン分解生成物のケイ皮酸モノマー(図1参照)である。ケイ皮酸モノマーはβ位にフェニル基が置換されたα、βー不飽和カルボン酸(β置換アクリレート)で、β位置換基の立体的、電子的な要因でラジカル重合法で高分子化が困難な難重合性モノマーに分類される。
グループトランスファー重合(GTP)とは?
グループトランスファー重合(GTP)は1980年代に開発された向山・アルドール反応(図2参照)を素反応とする精密重合法です。
出典:向山アルドール反応 Mukaiyama Aldol Reaction | Chem-Station (ケムステ)より引用
GTPの開始剤にはシリルケテンアセタール(図3参照)が用いられ、触媒としてルイス酸やルイス塩基が使用される。
また、有機分子触媒がGTPの限界を拡張しており、難重合性モノマーの精密重合を可能にした(図4参照)。
出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/53/12/53_12-3/_pdf/-char/enより引用
ケイ皮酸ポリマーの特徴
バイオマス由来のケイ皮酸ポリマーの最大の特徴は耐熱性の高さだ。GTP技術で合成されたケイ皮酸ポリマーはエンジニアリングプラスチックとして知られるポリカーボネートと同等以上の耐熱性を有している。また、多くの薬品に対する耐薬品性を有しており、高強度な材料として注目されている。
技術内容評価
【新規性】
★★★★☆
【経済への影響度】
★★☆☆☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★☆☆☆
【投資対象度】
★★★☆☆
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外部リンク
株式会社日本触媒 HP
https://www.shokubai.co.jp/ja/
国立研究開発法人理化学研究所 HP
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【ケミカルリサイクル】スチレンモノマーに戻す実証へ(PSジャパン)
ポリスチレン(PS)樹脂国内大手製造メーカーであるPSジャパン株式会社が東芝プラントシステムと使用済みのポリスチレンを熱で分解して原料のスチレンモノマーに戻すケミカルリサイクルの実証設備建設を開始すると発表した。今回はPSジャパン株式会社のケミカルリサイクルに関して詳細な情報を提供します。
出典:環境への取組み|PSジャパン株式会社より引用
目次
詳細情報
PSジャパン株式会社と東芝プラントシステムは使用済みのポリスチレンを熱で分解して原料のスチレンモノマーに戻すケミカルリサイクルの実証設備建設を開始すると発表した。両社間で基本設計契約を締結し、2021年3月には詳細設計や見積もりを盛り込んだ本契約を締結する。2021年度中にはケミカルリサイクル実証プラントの着工に入る予定だ。実証検討では食品トレーや家電製品の部品など様々な使用済みのポリスチレンを投入する予定。実証プラントで製造されたスチレンモノマーの成分検証を行い、早期の実用化を目指す。実証プラントの規模は1,000~数千トン/年を想定している。
東芝プラントシステム独自技術の特徴
・ケミカルリサイクル回収率が高い
・石油由来モノマー製造と比較して二酸化炭素の排出量が少ない
筆者の個人的な意見
ケミカルリサイクルはマテリアルリサイクルと比較してプラスチック性能の低下を防ぐことが出来るため、プラスチック産業界の主流となっていくと考えている。また、ポリスチレンは少ないエネルギーでスチレンモノマーまで分解することが可能であるため、ケミカルリサイクルを牽引するだろう。しかしながら、ポリスチレンのケミカルリサイクルに各社が取り組み始めており、東洋スチレン社は2021年度末に千葉市原工場に実証プラントを製造する予定。DIC社はエフピコ社とタッグを組み、2022年中に数千トン規模の実証設備を設ける計画を立てている。どの企業がポリスチレンケミカルリサイクルの覇権を取るか注目し、慎重に投資対象を決定すべきだろう。
技術内容評価
【新規性】
★★☆☆☆
【経済への影響度】
★★★☆☆
【SDGs貢献度】
★★★☆☆
【実現性】
★★★☆☆
【投資対象度】
★★☆☆☆
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外部リンク
PSスチレン社 HP
東芝プラントシステム社 HP
https://www.toshiba-tpsc.co.jp/